ジャコウガメ という亀がいます。
かなり小さい亀です。
派手ではない。
強そうにも見えない。
泥っぽい浅い水辺で、
静かに暮らしている。
水草の影。
ぬるい泥。
流れの弱い場所。
どちらかというと、
目立たずに生きる側の亀です。
でも、
この亀には、
かなり独特な防御があります。
危険を感じると、
強烈な臭いを出す。
英語では、
stinkpot(臭いツボ)
なんて呼ばれることもあるらしい。
日本語で表現すると、
ドブっぽい臭い
生乾きの雑巾っぽい臭い
泥水と魚が混ざった臭い
湿った水槽を放置した臭い
みたいに言われることが多いです。
しかも、
ツーンというより、
「うわ……なんか生臭い……」
という、
湿った系の臭いらしい。
だから、
香水みたいなジャコウを想像すると、
かなり違う(笑)
実際の「ジャコウ」は、
昔の人が麝香(じゃこう)っぽい分泌臭を感じたことから付いた名前みたいですが、
現代人の感覚だと、
「くさい水辺の生き物感」
のほうが近いと思います。
ただ、
ここが面白いんですよね。
この臭いって、
「絶対追い払う最強武器」
というより、
近寄りにくくするためのサイン
に近いらしい。
「それ以上、近づかないでくれ」
「今は無理なんだ」
そんな化学信号。
これ、
かなり人間っぽいなと思いました。
人間にもいますよね。
なんか近寄りづらい人。
いつも少し不機嫌な人。
皮肉っぽい人。
冷たい人。
距離を取る人。
若い頃の自分は、
そういう人を見ると、
「感じ悪いな」
と思っていました。
でも、
歳を取るにつれて、
少し見え方が変わった。
もしかしたら、
臭いを出しているのかもしれない。
これ以上、
傷つかないために。
踏み込まれすぎないために。
消耗しきらないために。
自分にも、かなり覚えがあります。
うつでしんどかった時。
仕事で余裕がなかった時。
借金のことばかり考えていた時。
頭の中が、ずっと重かった。
本当は、助けてほしい。
優しくされたかった。
でも、
弱ってる姿を見せたくない。
だから、
少し攻撃的になる。
黙る。
距離を取る。
愛想が悪くなる。
今思うと、
あれは性格じゃなく、
防御だった気がします。
研究では、
人間は拒絶や消耗が続くと、
怒り、
冷たさ、
距離化で、
自分を守ろうとすることがあるらしい。
近づきたい。
でも、
近づくと傷つく。
その矛盾。
ジャコウガメも、たぶん似ている。
本当は戦いたいわけじゃない。
ただ、
近づかれすぎると、
持たない。
しかも、
この亀、
派手でもなく、
大きくもないのに、
かなり長く生きる。
目立たない水辺で、
泥をまといながら、
じっと生き延びる。
なんというか、
「綺麗に生きる」
ではなく、
「なんとか持ちこたえる」
という感じがする。
最近、
いつも感じのいい人を見ると、
本当にすごいなと思います。
ちゃんと笑えて。
ちゃんと優しくて。
ちゃんと空気を整えられる。
でも、
あれって、
かなり体力がいる。
教師をしていると、
特にそう思う。
感情を整えて、
空気を壊さず、
子どもの前に立ち続ける。
かなり消耗する。
だから、
疲れると、
人は少し臭いを出す。
不機嫌。
沈黙。
冷たさ。
距離。
加齢臭(ボクの場合だけ笑)
もちろん、
それで誰かを傷つけていいわけじゃない。
でも、
「感じの悪さ」の全部が、
悪意だけで出来ているわけでもない。
ジャコウガメを見ていると、
そんなことを思う。
人間もたぶん、
多少臭いながら、
なんとか生き延びている。







