マリー川のカメ。
この名前だけ聞くと、どこか静かな生き物を想像します。
でも、実際に姿を見ると、なかなか衝撃的です。
頭の上に、鮮やかな緑色のモヒカン。
まるで、川底から現れたパンクロッカー。
「なんやこのカメ!」
最初に見た人は、たぶんそう思ったはずです。
でも
あのモヒカン。
髪の毛ではありません。
藻です。
しかも、カメ自身が「目立とう」として
生やしているわけでもありません。
長い時間を水中で過ごす暮らしの中で、
頭や甲羅に藻が育つことがある。
その結果、あの独特な姿になるんです。
つまり、あのパンクすぎる見た目は、飾りではない。
マリー川という場所で、長く、静かに、水の中で生きてきた痕跡なんです。
ここが、めちゃくちゃ面白い。
マリー川水系だけにいるカメ
マリー川のカメは、オーストラリア・クイーンズランド州南東部のマリー川水系だけにすむ淡水ガメです。
名前はメアリーリバータートル(またはマリーリバーガメ)
世界中どこにでもいるカメではありません。
マリー川という、かなり限られた水域に根ざして生きている固有種です。
しかも、このカメ、
正式に新種として記載されたのは1994年。
かなり最近です。
それまで人間の近くにいながら、長いあいだ「何者なのか」がよく分からないまま扱われていました。
派手な見た目をしているのに、学術的には長く見過ごされていた。
ここにも、なんとも言えない不思議さがあります。
目立つ姿なのに、存在そのものはひっそりしていた。
カメ界の、遅れてきたパンクロッカーです。
じつは、ものすごく古い系統の生き残り
このカメがすごいのは、見た目だけではありません。
マリー川のカメは、現生ではこの1種だけを含む属に分類されています。
つまり、かなり独自の進化の道を歩いてきたカメです。
資料によると、この系統は他の現生種からおよそ4000万年前に分かれたとも説明されています。
4000万年。
数字が大きすぎて、もはやピンときません。
人間の人生どころではありません。
文明どころでもありません。
とんでもなく長い時間をかけて、今の姿まで生き残ってきた。
そう考えると、あの緑のモヒカンも、ただの「変な見た目」では済まされない気がしてきます。
あの姿の奥には、ものすごく長い進化の時間が流れているんです。
「お尻で呼吸するカメ」と呼ばれる理由
そして、このカメの有名な特徴がもうひとつあります。
水中で長く過ごすために、総排泄腔という部分にある特殊な器官から、水中の酸素を取り込むことができるんです。
俗に言うと、
「お尻で呼吸するカメ」
です。
もう、情報量が多い。
頭にはモヒカン。
お尻で呼吸。
設定を盛りすぎたゲームキャラみたいです。
でも、これはネタではありません。
マリー川のカメが、川の中で長く生きるために身につけた大切な仕組みです。
資料では、水温17℃の条件では2.5日以上も浮上せずに潜水できることが示されています。
つまり、このカメはただ「変わったカメ」なのではない。
水の中で長く過ごすことに、ものすごく適応したカメなんです。
モヒカンは、ただのキャラづけではない
ネットでは、どうしても「モヒカンのカメ」として紹介されがちです。
たしかに、見た目のインパクトは強い。
サムネイルとしては満点です。
でも、本当におもしろいのは、その奥です。
あの藻は、長く水中にいる暮らしと関係している。
そして、このカメは流れがあり、酸素の多い川の環境を必要としている。
つまり、あのモヒカンは、単なる飾りではありません。
水中で長く過ごす身体。
酸素のある流れ。
川底での静かな暮らし。
そういうものが全部つながった結果として、あの姿がある。
「モヒカンがすごい」のではなく、
そのモヒカンを育てるだけの川と時間がすごい。
ここを見落としたら、このカメの本当の魅力は見えてこない気がします。
大人になるまで、とても時間がかかる
マリー川のカメは、成長もかなりゆっくりです。
性成熟、つまり繁殖できる大人になるまで、メスで約20〜25年、オスで約30年かかると見積もられています。
30年。
人間なら、もう立派な大人です。
でも、このカメにとっては、ようやく次の命をつなぐ段階に入るころ。
だから、一度数が減ると、簡単には戻りません。
卵が失われる。
子ガメが育たない。
川の環境が変わる。
それだけで、未来の親になるはずだった命が消えてしまう。
すぐに増えない。
すぐに戻らない。
マリー川のカメは、ものすごく長い時間の上に成り立っている生き物なんです。
卵を産む場所も、川に左右される
さらに、繁殖もかなり繊細です。
マリー川のカメは、川の砂州に卵を産みます。
しかも、その砂州は洪水などによって形が変わる場所です。
産卵の時期は、10月から1月ごろ。
雨に誘発され、夜間に行われることが多いとされています。
これ、かなり川まかせです。
卵を産める砂州があるか。
水位はどうか。
洪水で流されないか。
気温はどうか。
川の状態が、そのまま命のつながりに関わってくる。
つまり、マリー川のカメを守るというのは、カメだけを守ることではありません。
川そのものを守ることなんです。
昔は、ペットとして扱われていた
このカメには、少し苦い歴史もあります。
かつて、マリー川のカメの子ガメは「Penny turtle」などと呼ばれ、ペットとして流通していました。
資料によると、1962年から1974年までの12年間で、推定約12,000個の卵がペット取引用に採取されたとされています。
12,000個。
かなり大きな数です。
しかも、その結果、主要な営巣地では年ごとの営巣個体群が95〜96%も減少したとされています。
ここは、胸が痛くなります。
人間は、このカメがどれほど特別な生き物なのかをよく知らないまま、商品として扱っていた。
珍しいと分かれば騒ぐ。
知らなければ、雑に扱う。
見ているようで、ちゃんと見ていなかったんです。
今も危機は続いている
このカメの危機は、過去の話ではありません。
卵の採取が止まっても、若い個体が十分に育たない問題が続いています。
さらに、堰やダムによって川の流れが変わる。
砂州が失われる。
水の中の酸素が減る。
土砂が増える。
河畔の植物が失われる。
そうした変化が、マリー川のカメの暮らしを少しずつ追い詰めています。
このカメに必要なのは、ただの水ではありません。
流れがあり、酸素があり、深い淵と浅い瀬があり、
卵を産める砂州がある川です。
つまり、川の「形」そのものが大事なんです。
カメだけを水槽に入れて守ればいい、という話ではない。
マリー川という環境ごと守らなければ、このカメは生きていけない。
ここが、すごく大切なところです。
モヒカンだけを見ていると、見失うもの
僕らはつい、見た目のインパクトに飛びついてしまいます。
「パンクなカメ」
「モヒカンのカメ」
「お尻で呼吸するカメ」
たしかに、どれも強い。
タイトルにしたくなる。
僕も、最初はそこに惹かれました。
でも、調べていくと、その奥にはもっと静かな世界がありました。
流れのある川。
酸素の多い水。
卵を産む砂州。
何十年もかけて大人になる時間。
長い水中生活。
そして、そこに自然と育つ藻。
あのモヒカンは、急に生えたキャラではありません。
先にあったのは、川でした。
時間でした。
その場所で生き続けてきた身体でした。
先にあったのは、川だった
ここが、ボクにはかなり刺さりました。
ボクらはすぐに、目立つ部分だけを欲しがります。
バズる言葉。
映えるプロフィール。
それっぽい肩書き。
伸びるテンプレ。
でも、マリー川のカメを見ていると、逆なんです。
モヒカンが先にあったんじゃない。
先に川があった。
長い時間があった。
水の中で生きる身体があった。
その結果として、あの藻が育った。
これは、発信でも同じかもしれません。
いきなり「目立つ言葉」だけを頭に貼り付けても、それはたぶん長くは残らない。
自分の生活
失敗
観察
悩み
誰にも見えない時間。
そういうものが、自分の中に流れているからこそ、ある日ふと、自分にしか書けない言葉が生えてくる。
自分の川を濁らせない
マリー川のカメは、派手に見えて、とても静かな生き物でした。
パンクに見えて、誰よりも川に根ざしていた。
だから、僕らも焦らなくていいのかもしれません。
すぐに目立たなくてもいい。
すぐに結果が出なくてもいい。
まずは、自分の川を濁らせないこと。
自分の暮らしをちゃんと見ること。
自分の言葉が育つだけの時間を、雑に扱わないこと。
頭の上のモヒカンだけを欲しがるんじゃなくて、
そのモヒカンが自然に育つだけの川を守ること。
ぼちぼち、ボクらも自分の川を守っていきたいもんです。






昔、川で獲ったカメ。
モヒカンではないてますが、お尻?のところに長い毛の様なものがモサっとついてまし。
手放さなくてはいけなくなった時、動物園に電話しました。
こんなカメなんですが、引き取ってもらえませんか?と。
すんなり断られました😆
幼稚園のうさぎ小屋で飼ってもらいました。