カエルガシラニシクイガメという名前のかめがいる。
名前なが!!!
名前を聞いただけで、なんとなく想像できるやろ。
そう、頭がでかい。カエルみたいに。
でも実物を見ると、想像の3割増しでヤバい。
甲羅のサイズに対して、明らかに頭が合ってない。
バランスがおかしい。
そして当然のように、甲羅に頭を引っ込めることができない。ぷぷぷ。
かめといえば「危険を感じたら甲羅に引っ込む」
それがかめの生存戦略の基本やと思ってた。
でもこいつは違う。
物理的に無理なんや。
頭がでかすぎて入らへん。
じゃあどうするか。
噛む。
ひたすら噛む。
アゴの力が異常に強い。
外敵が来たら、引っ込む代わりに噛みついて全力で戦う。
防御をあきらめた代わりに、攻撃を極めた。
そういうかめや。
こいつの面白さはそれだけやない。
生息地が東南アジアの山岳地帯の急流。
冷たくて、流れが速い川。
でも、泳ぎは下手!なんでそんなとこ住んでるん!
その代わりに持ってる能力がある。
木登りや。
かめが木に登る。
アゴで岩や枝を掴んで、強い尻尾を支えに使って、体を引っ張り上げる。
水が速すぎて泳げへんから、岩や木をよじ登って移動する。
泳げないなら登ればいい。
なんかそういう開き直りを感じる。
さらにもう一個。
こいつ、帰巣能力がめちゃくちゃ高い。
研究で、成体を2,400メートル離れた場所に移動させた。
川の上流にも下流にも。
別の川にも。
それでも83%が元いた場所に戻ってきた。
かめ版GPSや。
どうやって帰るかはまだよくわかってないらしい。
でも確実に帰ってくる。
頭が大きすぎて、甲羅に入れない。
泳ぎが下手で、急流に住んでいる。
それでも岩場を登り、嚙みつき、帰ってくる。
弱点だらけに見えて、全部ちゃんと生き方になってる。
不完全なまま、それでもここにいる。
そういうかめや。
ちなみに今、絶滅危惧種に指定されている。
食用として乱獲された。
見た目が珍しすぎてペット需要も出た。
あの頭が、逆に仇になった。
なんか、かわいそうやなって思う。
あんなに工夫して生きてきたのに。
生き物の話をするとき、いつも思う。
「普通じゃない」ことが、そのままその生き物の強さになってたりする。
頭でかすぎて甲羅に入れないなら、噛みつけばいい。
泳げないなら、登ればいい。
引っ込む場所がないなら、帰る場所を覚えればいい。
カエルガシラニシクイガメは、たぶんそういうことを体で知ってる。
おもしろいかめがいるもんや。



