↑BGMです。どぞーー^^
オオアタマガメという亀がいます。
名前のとおり、
頭が大きい亀です。
ただ、
少し大きい、という程度ではありません。
多くの亀は、
危ないときに頭を甲羅の中へ引っこめます。
でも、
オオアタマガメは、
その大きな頭を甲羅にしまうことができません。
しまえないほどの頭を持っている。
まず、
そこがこの亀の入り口です。
中国南部から、
香港、
ラオス、
ミャンマー、
タイ、
ベトナムなど、
東南アジアの山地の水辺に暮らしています。
低く広い池というより、
山の中を流れる冷たい川。
岩が多い沢。
木陰におおわれた、
流れのある水。
そんな場所を使いながら、
静かに生きています。
この亀は、
泳ぎがとても得意な亀として知られているわけではありません。
むしろ、
面白いのは登ることです。
岩の多い沢で暮らし、
石のすき間に身をひそめ、
急な岩場をよじ登ることがあります。
そのときに役立つのが、
強い足の爪と、
長くて力のある尾です。
尾は、
ただ後ろについているだけではありません。
体のバランスをとる。
岩場でふんばる。
流れの中で、
自分の位置を保つ。
オオアタマガメにとって尾は、
山の沢で暮らすための大切な道具です。
そして、
大きな頭には、
鋭く曲がったくちばしのようなあごがあります。
カニ。
魚。
カエル。
水辺の小さな生き物。
そうした獲物を捕らえるために、
強いあごを使います。
近年の研究では、
動物質だけでなく、
植物質もふんから見つかっていて、
完全な肉食だけでは説明しきれない面もあるようです。
山の沢にあるものを使いながら、
この亀は生きています。
ふつうなら、
頭をしまえないことは弱点に見えます。
危ないとき、
甲羅の中に隠れられない。
それはたしかに、
不便なことです。
でも、
オオアタマガメは、
その弱点だけで終わっていません。
しまえない頭には、
強いあごがある。
長い尾は、
不格好に見えるかもしれないけれど、
岩場で体を支える。
泳ぎで勝つのではなく、
登る。
広い水面をすいすい進むのではなく、
石の多い沢を、
自分の体に合ったやり方で進む。
自然界には、
きれいにまとまった形ばかりがあるわけではありません。
どこか極端で、
どこか目立って、
一見すると扱いにくそうな体が、
その場所ではちゃんと意味を持つことがあります。
オオアタマガメの大きな頭も、
長い尾も、
ただの欠点ではありません。
その環境で生きるために、
選ばれてきた形なのだと思います。
ただし、
この亀はいま、
とても厳しい状況にいます。
山地の沢という、
限られた環境に強く結びついていること。
生息地が変わること。
人によって捕らえられてきたこと。
そうした影響で、
個体数は大きく減ってきたとされています。
国際取引を強く規制するCITES附属書Iにも掲載されています。
「変わった亀だね」
で終わらせるには、
あまりにも切実なところがあります。
その体に合った沢があるから、
この亀は生きられる。
岩場があり、
木陰があり、
水が冷たく、
身をひそめるすき間がある。
その条件が失われれば、
どれだけ強いあごを持っていても、
どれだけ登る力があっても、
生きる場所を失ってしまいます。
生き物の強さは、
体の中だけにあるのではありません。
その強さを使える環境があって、
はじめて強さになるのだと思います。
人間にも、
「しまえないもの」があります。
本当は隠したいのに、
どうしても表に出てしまうもの。
人と長くいると疲れること。
仕事から帰ると、
もう誰とも話したくなくなること。
恋人がほしい気持ちはあるのに、
休日になると家でゲームをしたくなること。
結婚の話をされると、
うまく笑えなくなること。
そういう自分を、
欠陥のように感じてしまう日があります。
周りから、
「彼氏は?」
「彼女は?」
「結婚は?」
と聞かれる。
悪気がないのはわかっている。
でも、
聞かれるたびに、
自分だけが何かの流れから遅れているような気持ちになる。
ちゃんと動けていない。
ちゃんと誰かを好きになれていない。
ちゃんと大人になれていない。
そんなふうに、
自分を責めてしまうことがあります。
でも、
ひとりで回復する生態を持っている人がいます。
仕事中、
ずっと気をつかっている。
人の表情を読む。
空気を読む。
返事の速さを考える。
断り方を考える。
それだけで、
一日の終わりには、
かなりの体力を使っています。
だから家に帰ったら、
すぐに誰かと会うより、
まず自分の内側を静かにしたい。
ゲームをする。
動画を見る。
本を読む。
何もしない。
それは怠けている時間ではなく、
自分の体を沢の石に引っかけて、
流されないようにしている時間かもしれません。
オオアタマガメが、
広い水面を泳ぐより、
岩場を使って進むように。
人にも、
自分に合った進み方があります。
外へ出て人に会うことで元気になる人もいます。
家に帰って、
ひとりになることで元気を取り戻す人もいます。
どちらが正しいという話ではありません。
生態が違うだけです。
恋愛や結婚についても、
同じことが言えるのかもしれません。
誰かと生きたい気持ちがある。
でも、
ひとりでいたい時間も大切にしたい。
この二つは、
本当は矛盾しなくていいはずです。
誰かを好きになることは、
自分の回復場所を全部手放すことではありません。
一緒に過ごすことは、
毎日ずっと話し続けることではありません。
近づくことは、
自分の形を消すことではありません。
オオアタマガメは、
頭を小さくして甲羅に合わせたわけではありません。
しまえない頭のまま、
その頭が意味を持つ場所で生きています。
人間も、
無理に社交的な人の形へ、
自分を削らなくていいのだと思います。
たくさん会える人。
少しずつ会いたい人。
家で過ごす時間が必要な人。
沈黙が苦にならない相手が合う人。
それぞれに、
合う距離があります。
恋愛をしない時期にも、
理由があります。
動けない時期にも、
理由があります。
ひとりが好きなことにも、
理由があります。
それは、
人として足りないということではありません。
自分の体と心が、
どうやって回復するのかを知っている、
ということでもあります。
もちろん、
ずっと何もしなくていい、
という話ではありません。
誰かと生きたい気持ちがあるなら、
いつか小さく動く日が来るかもしれません。
ただ、
その一歩は、
焦りや説教からではなく、
自分の生態を知るところから始まっていい。
どれくらい人といると疲れるのか。
どんな場所なら安心して話せるのか。
どんな相手なら、
沈黙していても自分を責めなくてすむのか。
どんな休日があれば、
また人に会う力が戻るのか。
そういうことを知るのは、
恋愛から逃げることではありません。
むしろ、
誰かと無理なく近づくための準備なのだと思います。
オオアタマガメは、
自分の頭をしまえません。
でも、
その頭で獲物をとり、
その尾で岩場を支え、
山の沢を生きています。
人間にも、
しまえない自分があります。
疲れやすさ。
ひとり時間の必要さ。
距離をとりたい感覚。
すぐに恋愛へ向かえない重さ。
それらを全部、
欠点として甲羅の奥へ押し込めようとしなくていい。
しまえないなら、
しまえないまま、
どう生きるかを考えていい。
自分の形に合う場所を探していい。
自分の速度で、
岩場を一つずつ登っていい。
もしかすると、
人生にも、
広い水面を泳ぐような進み方だけではなく、
石に手をかけながら進む時間があっていいのかもしれません。
参考リンク
写真の出典
1. 野外で見つかったオオアタマガメ
撮影者: Toby Y
ライセンス: CC BY 4.0
出典: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Platysternon_megacephalum_208194728.jpg
2. アクア・トトぎふで撮影されたオオアタマガメ
撮影者: Jony Cooper
ライセンス: CC BY-SA 4.0
出典: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:%E3%82%AA%E3%82%AA%E3%82%A2%E3%82%BF%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%83%A1.jpg
3. 大きな頭と長い尾がわかる標本写真
撮影者: Roger Culos
ライセンス: CC BY-SA 4.0
出典: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Platysternon_megacephalum_MHNT_CHE_1992-19.jpg
4. 幼体の頭部
撮影者: Waterhouse
ライセンス: CC BY-SA 3.0
出典: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:%E9%B9%B0%E5%98%B4%E9%BE%9F.jpg
5. 雨の日、窓辺で本を読む時間
撮影者: Shixart1985
ライセンス: CC BY 2.0
出典: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Person_reading_a_book_while_lying_on_a_bed_next_to_a_window_during_a_rainy_day.jpg
6. 夜、灯りの下で本を読む時間
撮影者: Shixart1985
ライセンス: CC BY 2.0
出典: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Young_man_reads_a_book_under_a_lamp_in_a_dimly_lit_room_undefined.jpg










