エロンガータリクガメという亀がいます。
東南アジアの森に暮らす、
リクガメです。
派手な亀ではありません。
大きな角もありません。
鮮やかな模様もありません。
森の落ち葉の中にいると、
気づかず通り過ぎてしまいそうです。
でも、
この亀には面白い特徴があります。
キノコを食べるんです。
リクガメなのに、
キノコを重要な食べ物の一つにしています。
森の中を歩く。
落ち葉の間から顔を出したキノコを見つける。
果実も食べる。
やわらかい植物も食べる。
時には、
カタツムリやミミズ、
小さな動物、
腐肉まで利用します。
とても柔軟な食生活です。
一見すると、
ただ食べているだけです。
でも、
その暮らしは、
森の地表の世界と深くつながっています。
果実を食べる地域では、
種子を運び、
森の植物が広がる手助けをしている可能性もあると考えられています。
落ち葉の中を歩き、
キノコを食べ、
林床にあるさまざまな命を利用しながら生きる。
エロンガータリクガメは、
森の静かな循環の中で暮らしている亀なんです。
目立つ人がいます。
前に立つ人がいます。
賞をもらう人もいます。
でも、
その人たちだけで社会は動いていません。
毎日、
誰にも気づかれずに頑張っている人がいます。
子どもの話を聞く先生。
家族のために料理を作る人。
職場を静かに支える人。
そういう人たちがいるから、
毎日は回っています。
エロンガータリクガメも、
今日も森の中を歩いています。
急がない。
目立たない。
でも、
森の中を静かに歩き続けています。
残念なことに、
この亀は今、
絶滅の危機にあります。
森が減り、
人に捕られ、
その数は少しずつ減っています。
目立たない存在だからこそ、
気づかれないまま失われてしまうこともあります。
もしかすると、
本当に大切な仕事というのは、
誰かに見られることではないのかもしれません。
拍手がなくてもいい。
目立たなくてもいい。
静かに歩き続けることが、
誰かの未来につながっていることもある。
エロンガータリクガメは、
そんなことを教えてくれる亀なのかもしれません。













