スッポンという亀がいます。
日本や中国、
朝鮮半島など、
東アジアの川や池、
流れのゆるやかな水辺に暮らしています。
甲羅の長さは、
20〜30センチほど。
条件が良ければ、
30年以上生きることもある亀です。
亀と聞くと、
多くの人は、
硬い甲羅を思い浮かべます。
危険が来たら、
甲羅の中に頭や手足を引っ込める。
それが亀の特徴です。
でも、スッポンは違います。
甲羅が柔らかいのです。
正確には、
骨の甲羅の上を、
革のような厚い皮膚が覆っています。
そのため、
他の亀のように
硬い盾にはなりません。
頭や手足も、
完全には隠せません。
では、弱いのでしょうか。
いいえ。
スッポンは、別の強さを身につけました。
体は平らで、
水の抵抗を受けにくい形をしています。
泥の中へ、すばやく潜ることができます。
長い首を伸ばし、
鼻だけを水面に出して
呼吸を続けることもできます。
敵から身を隠しながら、
じっと獲物を待つことができるのです。
食べるものも幅広く、
魚やエビ、
カエル、
昆虫、
貝などを捕らえる肉食性の強い亀です。
動く獲物に向かって、
一瞬で首を伸ばし、
素早く捕まえます。
硬い甲羅がなくても、生き残る方法はありました。
自分にないものを
嘆くのではなく、
自分にあるものを
磨いたのです。
誰かのように話せない。
誰かのように目立てない。
誰かのように器用にできない。
そんな日があります。
でも、
ないものばかりを
数えていると、
自分だけの強みは
見えなくなります。
硬い甲羅を
持てなかったスッポンは、
泥に潜る力を身につけました。
長い首を武器にしました。
素早く動く力を磨きました。
完璧ではなかったからこそ、別の才能が育ったのです。
私たちも、
足りないものばかりを
気にするより、
今ある力を
育てていけばいい。
人は、
つい「弱点」を隠そうとします。
でも、
弱点をなくすことだけが
成長ではありません。
弱点があるからこそ、
別の力を伸ばすこともできます。
スッポンは、
硬い甲羅を手に入れませんでした。
その代わり、
柔らかい体で水に溶け込み、
素早さと工夫で
何千万年も生き抜いてきました。
強さとは、
みんなと同じになることではない。
自分に合った生き方を
見つけることなのかもしれません。
スッポンは、
そんなことを
静かに教えてくれています。






