硬い甲羅を捨てた亀の話
パンケーキリクガメという亀がいる。
名前を聞いて、なははと思い調べてみました。
パンケーキ。そのまんまだ。
それでも、この亀のことを知れば知るほど、笑えなくなってしまった。 というか、笑いながら「すごい」ってなった。
アフリカ東部。ケニアやタンザニアの乾いた岩場。
そこに暮らすパンケーキリクガメは、亀なのに甲羅がペッタンコだ。 普通のリクガメの甲羅を想像していると、完全に裏切られてしまう。 横から見たら「甲羅、ある?」って確認した薄さ。
それに、その甲羅が柔らかい。
普通の亀の甲羅はカチカチだ。あれが防御の要だから。
それでもパンケーキリクガメは成体になっても甲羅の間に隙間があって、柔軟性がある。
亀として、それはこれってありなのか?
ちゃんと理由がある。
岩の隙間に入るためだ。
天敵が来たとき、パンケーキリクガメは逃げる。
なんと動きは速い。そして岩の割れ目に入り込む。
割れ目に入ったあと、空気を吸って体を膨らませる。
同時に、四本の足を岩に突っ張る。
膨張らんで、突っ張る。
これには敵はお手上げ。
硬い甲羅で正面からガードする、じゃない。 柔らかい甲羅で隙間に入り、ふくらんで出られない。 守り方の考え方が、根本から違う。
垂直な岩の目を上り下りすることもできる。
産卵
パンケーキリクガメは1度の産卵で卵を1個しか産まない。
1個だ。
普通の亀は数十個産む種類も多い。それでもパンケーキリクガメは、1個。
その1個が孵化するまでに、早くて100日、遅くても300日かかります。
300日待って、1個。
生まれてきた子亀も、最初から岩場で生きていけない。どうしてるん?
ゆっくりしか増えない。数が増えない。
で、ここからが切ない話。
パンケーキリクガメはペットとして人気が出ました。
平べったくて、速くて、岩に登って、甲羅が膨らむ。 面白い。かわいい。飼いたい。
その気持ちはじゅうじゅうわかる。ボクもほしい。
それでも、人気が出たところで乱獲が進んだ。人間の悪いところ。
住処の岩場が、どんどん破壊されていった。
300日かけて1個の卵を産む亀が、大量に捕獲されていった。
2019年、ワシントン条約でCITES附属書1に登録された。 IUCNのレッドリストでは「絶滅寸前」の評価を受けている。
かわいいと思われたことが、この亀にとっては災難だった。
これから話を調べていると、亀の世界ってなかなか複雑だなと感じる。
硬い甲羅を捨てて、逃げ足を手に入れた亀。 1個の卵に300日かけて生まれる。 かわいいせいで絶滅しかけた亀。
パンケーキリクガメという名前は笑えるけど、生き方は笑えない。
パンケーキリクガメは現在、東山動植物園などの一部の動物園で見ることができる。 名古屋の東山では「ホットケーキ」と「ショートケーキ」という名前がついている。
またネーミングが絶妙!





