アラカンヤマガメという亀がいます。
ミャンマー西部の山地林を中心に暮らす、
とても珍しい森の亀です。
甲羅の長さは、20センチほど。
森の落ち葉や、竹林の中で暮らしています。
この亀には、少し変わった生き方があります。
昼になると、あまり姿を見せません。
日差しが強くなる時間は、
落ち葉の下や、
木陰で静かに過ごします。
では、体が弱いのでしょうか。
違います。
夜になると、森を歩き始めます。
落ち葉の間を進み、餌を探します。
そして、
雨季に入るころになると、
活動する姿が、
より多く見られるようになります。
昼に動けない亀ではありません。
昼の暑さを避け、
自分に合った時間を選んでいるのです。
自然界は、
みんなが同じ時間に頑張るようにはできていません。
朝に活動する生き物もいます。
昼に活動する生き物もいます。
夜に力を発揮する生き物もいます。
人間は、
朝から元気に動ける人が、立派だと思いがちです。
朝活を続ける人。
朝から笑顔で仕事をする人。
そんな人を見ると、
自分と比べてしまうことがあります。
でも、
生き物の世界を見ると、
正解は一つではありません。
ぼくは、うつ病を経験しました。
朝になると、
体が動かない日がありました。
「頑張らなければ。」
そう思うほど、
余計に動けなくなる。
そんな日もありました。
もちろん、
うつ病は、
朝型か夜型かという話ではありません。
必要な治療や、
周りの支えが大切です。
それでも、
「朝に動けない自分はダメなんだ。」
そう思い込んでしまう人は、
少なくないと思います。
アラカンヤマガメを見ていると、
そんな考えが、
少しだけやわらぎます。
大切なのは、
誰かと同じ時間に動くことではありません。
自分が動ける時間に、
自分らしく動くことです。
休む時間があるから、
歩ける時間があります。
静かな時間があるから、
前へ進めます。
昼は落ち葉の下で、
静かに身を守る。
夜になると、
森をゆっくり歩き始める。
その姿は、
怠けているのではありません。
生き延びるために、
自分に合ったリズムを選んでいるだけです。
この亀は、長い間、
「幻の亀」と呼ばれていました。
一度は、ほとんど姿を消したとも思われました。
それでも、森の奥で生き続けていました。
目立たなくても、
消えたわけではなかった。
静かに、
生き続けていたのです。
人も、同じなのかもしれません。
今は休んでいるように見えても、
誰にも気づかれなくても、
その人の時間は、ちゃんと流れています。
朝に動けない日があってもいい。
人より遅くてもいい。
自分の時間が来たら、
また歩き始めればいい。
アラカンヤマガメは、
昼に隠れ、
夜に生きることで、
森の中を生き延びてきました。
だからぼくは、
この亀を見るたびに思います。
人には、
人それぞれの時間がある。
その時間を信じて歩くことも、立派な生き方なのだと。










文章にシンパシーを感じていました。私もうつ病を患い13年目です。前職は退職しましたが、頑張り過ぎず、ぼちぼち生きてます。