ある日の放課後
学校の下足室で、
五年生が言い合いをしていました。
「お前、後ろから叩いたやろ!」
「いや、叩いてない!」
そんな感じで、
かなり険悪な空気。
しかも聞いてみると、
それが起きたのは、
放課後ではありませんでした。
1時間目の体育。
つまり、
その日のほとんどを、
モヤモヤしたまま過ごしていたんです。
話を整理すると、
こんな感じでした。
Aは、「Bが先に叩いてきた」
だから、
やり返した。
でもBは、「俺は先にたたいてもいない」
逆に、
Aが叩いてきたから、
やり返した。
お互い、
「相手が後ろからたたいてきた」
と言う。
で、
また腹が立って、
放課後の下足室で再燃。
そして、
言い合いをしていたところに
僕が通りかかりました。
正直、
教師をしていると、
こういう場面って結構あります。
しかも、
大人から見ると、
「そんなことで?」
と思うような内容だったりする。
僕は二人に聞きました。
「なんで言葉で言わへんの?」
Aは「最初、言葉で言った」
と言う。
「今、叩いた?」
「叩いてないよ」
もし本当に当たってたなら、
「ごめんごめん」
で終わる話かもしれない。
でも、
子どもたちは、そうならない。
すぐ、やり返す
しかも、
正直なところ。
僕はその現場を見ていません。
だから、
どっちが本当のことを言っているか、
断定はできない。
なんとなく、
「あれ、ちょっと怪しいな」
と思う部分もありました。
でも、
教師って、
見ていないことを決めつけるわけにはいかない。
だから結局、
僕が言えるのは、
「叩いたら叩き返す、っていうやり方は違う」
という、
ある意味、
当たり前のことだけでした。
でも、
今日すごく考えたんです。
なんで子どもって、
こんな小さなことで、
叩き合いになるんだろう。
「やられたら、やり返さないと損」
みたいになるんだろう。
たぶん、
子どもの中では、
叩かれたこと以上に、
「バカにされた」
「負けた」
「ナメられた」
みたいな感覚が大きいんですよね。
だから、引けなくなる。
しかも、
子どもって、
まだ自分の気持ちを、
言葉で整理するのが難しい。
モヤモヤする。
腹が立つ。
悔しい。
でも、
どう伝えたらいいかわからない。
だから、
手が出る。
そして、
怖いのは、
そのモヤモヤが、
ずっと残ることです。
今日の子たちも、
1時間目のことを、
6時間目が終わるまで引きずっていた。
その間、
ずっと頭のどこかに、
引っかかっていたんだと思います。
教師って、
ケンカを止める仕事でもあります。
でも最近、
それだけじゃないなと思います。
「言葉で解決する練習」
を、一緒にしていく仕事なんだろうなと。
「今、嫌やった」
「それ、やめて」
「本当にやった?」
「ごめん」
そういう言葉を、
少しずつ覚えていく。
大人になるって、
暴力を使わなくなることじゃなくて、
言葉でモヤモヤを扱えるようになる
ことなのかもしれません。
そんなことを、
今日の下足室で、
少し考えていました。




